浮世絵の中に描かれる様々な「煙管」
古い時代から日本人の生活に根付いてきた「煙管」は、浮世絵にも数多く描かれています。
庶民の生活にも身近であったからこそ、様々な作品の「アクセント」として取り入れられたのでしょう。
そもそも浮世絵とは、その世代の風俗を描き、庶民の人気を博したものです。浮世絵の世界から、「煙管」の実態を垣間見ることができます。
美人画で知られる喜多川歌麿は、現代も人気が高い浮世絵師です。
彼は人気遊女の浮世絵も多数手がけており、その中にはもちろん「煙管」が登場するものもあります。
「当時全盛似顔揃 扇屋内花扇」は、高い知性と確かな教養を持つ高級遊女・四代目花扇を描いた作品です。
色っぽい彼女の手には、高級遊女としてのステータスシンボルでもある、長い煙管が描かれています。
また同じ喜多川歌麿作の「張見世」では、遊女たちの前に様々なたばこ盆が置かれているのを見ることができます。
たばこ盆や煙管は、遊女の格によってランクが異なるものです。
当時の文化を知ることができる、貴重な浮世絵です。
葛飾北斎一世は「今様櫛[キセル]雛形」という書物を残しています。
鈴木春信は茶屋で煙管を手にくつろぐ人と人気に茶屋娘を描いた「おせん茶屋」。
そして寿好堂よし国は、煙管を小道具として扱う役者を描いた「市川団蔵の早野勘平」を残しています。
浮世絵の世界と共に、煙管にも注目してみてください。
ファッション、ステータスアイコンとしての「煙管」文化
日本の伝統的な喫煙具として、独自の発展を遂げた「煙管」には、根強いファンも数多く存在しています。普通の紙巻きたばこや西洋風のパイプでは味わえない、「粋な雰囲気」があると言えるでしょう。
そんな煙管と共に成長してきた、日本文化について紹介します。
■ファッションアイテム
煙管が一般庶民にも浸透したのは、江戸時代のことであったと言われています。その時代において煙管とは、単なる喫煙具というだけではなく、持ち主のセンスを表すためのアイテムでもありました。
どのような煙管を愛用し、またたばこ入れや煙管筒、根付けなど、煙管に関わる持ち物とどう組み合わせるのかによって、人々は自分自身の「個性」を表現していたのです。
こうした声に応えるため、様々なデザイン、機能を持った煙管、そして関連商品が生まれたと言われています。
特に茶席などでたばこが振る舞われる場合、煙管にもこだわりを持って客人をもてなす人が多数。
特に人気が高かったのは、南蛮貿易の時代にヨーロッパからもたらされた「ガラス」を用いた煙管だったと言われています。
たばこの味と共に、そのファッションセンスにもこだわる文化――。
当時の人々が、どんな風に喫煙習慣を楽しんでいたのか、目に浮かびますね。
■ステータスを表すアイテムとして
また煙管は、持ち主のステータスを表すアイテムとしても使われました。
風俗画などで知られる、江戸時代の伊達男や遊女も、煙管を愛用。
煙管の長さが長ければ長いほど、「格」が高く「粋である」とみなされることも多かったようです。
遊女の中でも美しさと教養を兼ね備えた最高位の女性は「太夫」と呼ばれ、非常に長い煙管を使っていたと言われています。
現代に残る風俗画の中で、遊女たちがどんな煙管を手にしているのかにも注目してみてはいかがでしょうか。
■身近な品として
さらに煙管は、江戸時代の多くの人々にとって身近な品でした。様々な機能を兼ね備えた、今では考えられないようなユニークな煙管も数多く存在しており、当時の人々の人気を集めたのです。たとえば時代劇などでは、煙管を使って、目下の者に指示を出す様子が描かれることも。
これは煙管が、「いつでも手元にある細長い物」として、指示棒のような役割を担っていたことを示します。
また暑いときに涼をとるための「扇子」をデザインのモチーフにした煙管も登場。
より実用的に、筆記用具と兼用した煙管もありました。日常生活の中で煙管は、なくてはならないものだったと言えるでしょう。
現代で「煙管」といえば、どこかノスタルジックな雰囲気を漂わせる特別なアイテムです。
ファッションの一部として、また自身の格を高めてくれる象徴的なアイテムとして、昔の人に倣ってみてはいかがでしょうか。
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