日本の伝統的喫煙具である「煙管」――実は茶道具としても活躍
現代において「喫煙」といえば、紙巻きたばこを愛用する方が多いもの。
しかし一方で、自身の手でより風流にたばこを楽しむため、煙管を愛用する方もいらっしゃいます。
この煙管は、日本独自の喫煙具として、江戸時代から400年以上にわたって愛されてきたものです。
過去には「茶道の道具」として取り入れられた歴史もあります。知られざる日本の文化を紹介します。
■茶道においての「煙管」と「たばこ盆」
茶道に煙管が取り入れたのは、江戸時代の初頭のことでした。
室町時代の末期に、ポルトガルの宣教師によって日本にもたらされた”たばこ”。
それ以降、日本では煙管を用いての喫煙習慣が広がりました。
とはいえ、当時のたばこは非常に高価な薬品の一つ。
裕福な武士の一家や商人のみが楽しめる「貴重な品」であったと伝わっています。
しかし、徐々にたばこをめぐる状況は変化。
江戸幕府がたばこ禁止令を出していた時期もありますが、たばこの値下がりなども影響し、庶民にも喫煙習慣が広がっていくことになります。
それと共に、煙管文化も広まっていったのです。
茶道において煙管が採り入れられるようになったのは、こんな時代のことでした。
「たばこ盆」と呼ばれるお盆の上に、「煙管」や火種を入れておく「火入れ」などを共に乗せ、客人にふるまわれました。
■煙管やたばこ盆が果たす役割とは?
たばこ盆にのせ、煙管が客人にふるまわれたのには、もちろん意味があります。
それは、茶会での「どうぞくつろいでください」というもてなしの意を示すため。
このためにたばこ盆や煙管は、茶席だけでなく、案内されるのを客人が待つ場所などにも設置されたと言われています。
「どうぞ一服」という意味合いと共に、火入れの中にたばこの灰で模様を作り、それをみんなで鑑賞したとも伝わっています。
今も昔も、たばこや煙管は、人々のコミュニケーションを仲介する意味を持つアイテムであったと考えられます。
■意外と身近にある「煙管」
茶道具としての煙管は、意外と身近なところでも目にすることが可能です。
それは毎年三月に、女の子の健やかな成長を祈って行われる「ひな祭り」でのこと。
古くから伝わる伝統的な「ひな人形」には、おひなさまの嫁入り道具の一つとして、煙管が用意されています。
箪笥や針箱、牛車や火鉢などと共に用意された茶道具には、いつの世も変わらない「大切な娘が末永く快適に暮らせますように」という親の愛情が込められていたのでしょう。
ひな祭り展などで、古くから伝わるひな人形を目にする機会があれば、ぜひ探してみてはいかがでしょうか。
現代で煙管と聞くと、「ちょっと特別なアイテム」として認識する方も多いことと思います。
しかし実際には、日本の文化・歴史に根付いたアイテムだと言えるのです。
時が経ち、現代においては、従来のたばこから電子たばこに切り替える方も増えています。
数ある商品の中からあえて「電子煙管」を選ぶことで、情緒あふれるたたずまいを演出できます。
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